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先端レーザー科学教育研究コンソーシアムCORAL開講科目
2019年度夏学期(前期・Sセメスター)先端光科学講義T
開講時期: 4〜7月 月曜日2限目(10:25 〜 12:10)
教室: 東京大学本郷キャンパス 理学部化学本館4階講義室
日付 タイトル
担当
内容
4/8(月) ガイダンス
5/20(月) ランプによるUV光及びVUV光の発生方法と産業界での光の応用
ウシオ電機株式会社 小田史彦

神社仏閣の松明はどのような原理による光源だろうか?講義の最初に人工光源を大別し,その内のガス放電ランプ,特に紫外(UV)域から真空紫外(VUV)域の光を発するランプの発光原理と,それらランプを作る上でのキーポイントを解説する.そして,UVランプ,VUVランプの産業界における応用について紹介する.また,近年急速に性能が向上してきたLED,レーザについて,その応用を中心に紹介してランプの光との性質や使われ方の違いについて一緒に考えてゆく.

キーワード: ランプ,原子・分子・エキシマ発光,紫外光,真空紫外光,光化学反応,フォトリソグラフィ,プロジェクタ
5/27(月) 光の量子性と光子計数法
東京大学大学院工学系研究科附属光量子科学研究センター 小芦雅斗

輻射場の量子性について説明し,光と物質の相互作用における光の量子効果について解説する.さらに実習と関連し,光の量子論的制御法とその検出法についても解説する.

キーワード: 光子,光の量子論,光子統計,非古典光源
6/3(月) 空間光変調器とその応用
浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 井上 卓

位相変調型空間光変調器は,光の位相の空間分布=波面を制御することができる.波面制御によって収差補正・ビーム分岐・ビーム形状制御が可能なため,レーザー加工や眼底イメージング,顕微鏡などへの応用が研究されている.空間光変調器の原理,性質,使用上の注意と,各種の応用事例を説明する.

キーワード: 空間光変調器,光学,波面制御,液晶,フーリエ変換光学系,収差,回折,光渦(ラゲールガウスビーム)
6/10(月) 光学産業における光学技術
株式会社ニコン コアテクノロジー本部 菅谷綾子

光学産業で行われている研究開発の事例を紹介しながら,大学の光学教育であまり触れられない幾何光学・収差論・結像論の要点を解説する.光学産業をより身近に感じるための講義である.

キーワード: 光学,光学産業,幾何光学,結像
6/24(月) 科学と技術の再結合を考える
電気通信大学 レーザー新世代研究センター 植田憲一

筆者は数多くのプロジェクト研究,それも科学研究に従事した経験を持つ.純粋科学研究を通じて新規技術の開発にどのように寄与するべきか,実例紹介を しながら,科学と技術を再結合させる道を議論する.それは同時に,みなさんがこれから歩もうとする研究者,技術者の生き方についても参考になると信じ る.与えられた機会を最大限活用すれば,雇われ仕事は自己発見の最大のチャ ンスともなりうることを示し,研究者,技術者として自己実現しようと考えて いる若い学生諸君の参考に供する.

キーワード: ファイバーレーザー,セラミックレーザー,周波数安定化,重力波天文学,レーザー核融合
7/1(月) レーザダイオード(LD)励起固体レーザの設計
昭和オプトロニクス株式会社 角谷 実

レーザダイオード(LD)励起固体レーザは現在では計測から加工まで幅広く用いられ,用途に応じた様々な波長,出力,動作モードのものがある.このうち小型で連続波出力のレーザを例にとり,必要な出力を得るための設計や波長・スペクトル制御方法について概説する.ミスアラインメントを光線行列に加えた解析方法のレーザ共振器への適用についても紹介する.また,レーザ動作の理解を深めるために,レーザレート方程式に立ち戻って緩和振動や利得スイッチングなどの動的特性についても説明する.

キーワード: 固体レーザ,LD励起,緩和振動,光線行列,波長制御,波長変換
7/8(月) ハイテクを支えるものづくり
シグマ光機株式会社 多幡能徳,野崎喜敬,北 和門

光源,位置制御,光学部品などのユニットは,目的に応じた形で組み合わされることによって,最先端アプリケーションシステムの構築に応用されている.個々の構成要素がいかに組み合わされて,最新システムが構成されているかを学ぶ.

キーワード:研磨,蒸着膜,ハイパワーレーザ,干渉,光学の基礎,レーザ加工
7/22(月) 光MEMSデバイスと画像処理の応用について
株式会社ブイ・テクノロジー 水村通伸

画像処理は,観測,認識,計測,3次元画像生成など多岐にわたり応用されている.これら画像処理と呼ばれるものは,ある物体像をデジタルデータ化し,コンピュータにデジタルデータとして取り込んだ時点以降からの処理になる.デジタル画像は2次元座標系の関数とみなせるため,さまざまな数学的な演算処理を定義することができる.演算としては四則演算,論理演算や代数演算といった演算を行うことができ,用途に応じてさまざまな演算処理が画像処理として行われている.本講義では画像処理の一連の流れを理解できるよう,一般的なデジタル画像取得方法から映像信号の取り扱いなどについても簡単にふれ,さらに最新の光MEMSデバイスを適用した画像処理の応用例をいくつか取り上げ,さらに2つの画像の相似性の議論から導き出される相関係数がすべての画像処理と深く関係していることを紹介する.

キーワード: 画像処理,デジタル画像,相関,MEMS

2019年度夏学期(前期・Sセメスター)先端光科学実験実習T
開講時期: 4〜7月 火,水,木曜日の各曜日3〜5限目(13:00 〜 18:35)
教室: 東京大学本郷キャンパス 理学部化学本館地階1003号室
日付 タイトル
担当
内容
4/8(月) ガイダンス
5/21(火),
   22(水),
   23(木)
UV光の分光法と光化学反応の体験実習
ウシオ電機株式会社 小田史彦,森本幸裕

ガス放電からの発光スペクトルは,放電ガス圧力の変化によって変化する.ランプの設計はこの現象を利用し,また制御する技術に基づいている.1つ目の実習では,超高圧水銀(Hg)ランプの放射スペクトルを時間分解測定し,スペクトルの時間変化からHgランプ中の発光現象と測定法としての分光法を学ぶ.2つ目は,真空紫外光を用いて大気中酸素からオゾンを生成させ,手動にて分光吸収スペクトル測定を行いオゾン濃度を定量する.また,真空紫外光による撥水性→親水性の変化を体験し,これらの実験を通じて,光化学反応の基礎を学ぶ.この実習使用する2種類の紫外光源(エキシマランプ,キセノンランプ)の構造と特長,そして取扱いを理解する. (6名)

キーワード: エキシマランプ,超高圧Hgランプ,モノクロメータ, 光化学反応,ガスの光吸収スペクトル,オゾン発生
5/28(火),
   29(水),
   30(木)
光子相関計数法とその応用 
東京大学大学院理学系研究科・工学系研究科 森田悠介,吉岡孝高

講義と連携し,光子相関計数法の実習を行う.2次の相関 に関する簡単な解説を行った後,光子計数法による2次の相関計測実験を実際に立ち上げる.計測機器の特性や使用法を学んだ上で,レーザ光や熱的光の光子統計性を調べることで古典的な光や量子光学的な光の識別法について理解を深める.(4名) 

キーワード: 光子計数法,HBT干渉計,量子光学 
6/ 4(火),
    5(水),
    6(木) 
空間光変調器を用いた光の空間的性質制御
浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 井上 卓,松本直也,酒井寛人

空間光変調器(SLM)を用いた空間的フーリエ変換光学系を構築し,光波面の基本的な性質を調べる実験を行う.SLMで回折,収差,光渦などを生成し,その特性を計測することを通じて,SLMの使い方を習得すると共に,光学系の基本的な性質を体感する.(6名)

キーワード: 空間光変調器,光学,波面制御,液晶,フーリエ変換光学系,収差,回折,光渦(ラゲールガウスビーム)
6/12(水),
   13(木)
二日とも
受講する
こと
レンズ設計・基礎から実戦まで 
株式会社ニコン 大内由美子,菅谷綾子, 吉田三環子, 竹中修二,鳥取潤一郎, 水田正宏 

内容: レンズ設計実習を通じて幾何光学,波動光学に関する基礎を会得する.受講者全員にノートパソコンを貸与し,光学設計の専門家がレンズ設計ソフトを用いて指導する.レンズの特性,結像の際に生じる収差や評価の基本的な内容から,カメラレンズの自主設計まで行う.2回の実習で完結し,設計結果講評会で締めくくる.(15名) 

キーワード: レンズ,光学設計,主光線,収差,MTF (Modulation Transfer Function) 
6/25(火),
   26(水),
   27(木)
種々のレーザー基礎実験
電気通信大学 レーザー新世代研究センター 米田仁紀
 

自らが手を出してレーザー機器やレーザーを使ったシステムを構築し動作原理など理解する.以下のテーマについて,最初から製作,組み立てを行う.

(1)レーザーピンセット 生体実験で使われる水中の微粒子を光でトラップし,操作するレーザーピンセットをその顕微鏡システムからくみ上げ,実際にレーザー場に試料をトラップする.(5名程度)

キーワード:光トラップ,ブラウン運動

(2)窒素レーザー製作 紫外線レーザーの1つである,窒素レーザーを放電回路,始動ギャップ,伝送線路等から製作し,レーザー発振させる (5名程度)

キーワード: 紫外レーザー,放電,窒素レーザー

(3)固体レーザー発振 半導体レーザー励起固体レーザー発振および共振器内波長変換を,励起光および共振器のアライメントにより達成する。励起の空間分布により出てくるレーザーの空間モードの変化なども観測する.(3名程度)

キーワード:固体レーザー、波長変換、光のモード
7/ 2(火),
    3(水),
    4(木)
レーザの時間応答制御と波長制御
昭和オプトロニクス株式会社 角谷 実

レーザダイオード(LD)励起固体レーザの励起用LDの温度や駆動電流を変化させることで基本的な動作を確認し,さらに駆動電流を変調することで緩和振動や利得スイッチング動作を観察する.また,ガラス基板に温度勾配を与えることで動作する光偏向器の動作を確認し,これを青色LDの拡張共振器に挿入すること可動部のない波長可変レーザの動作を試みる.(6名)

キーワード: 固体レーザ,緩和振動,利得スイッチング,波長制御,光偏向器
7/ 9(火),
   10(水),
   11(木)
①光学素子の取り扱い方及び製造に必要な基礎技術の実習
②光学応用システムの構築実習及び光学素子の評価
シグマ光機株式会社 多幡能徳,北 和門,山ア宣幸

基本的な光学特性である干渉,偏光,回折,屈折,反射などを理解するため,干渉計などの光学系を組み,配置や調整方法,光学素子・光学部品の取り扱いについて学ぶ.自分の目で見,自分の手で操作すると言う体験によって理解を深めると同時に,理論を実現化する際に注意すべき箇所や部品の性能による影響などを認識する.また、研磨や蒸着前工程などの光学素子製作の体験を通して、光学性能に影響を与える要因と、高精度光学素子を支える特殊技能について理解する。(8名)

キーワード:研磨,蒸着膜,ハイパワーレーザ,干渉,光学の基礎
7/23(火),
   24(水),
   25(木)
DMDによる映像表示および画像解析に関する実習
株式会社ブイ・テクノロジー 水村通伸,滝本政美

MEMSデバイスとしては,自動車関連では加速度センサを使用したエアバッグシステムや駆動制御パーツとしての圧力センサ,医薬関連では血圧センサなどがあるが,もっとも商業的に成功したものとして米国テキサスインスツルメンツ社の開発したDMDチップがビデオプロジェクタに採用され量産されている.DMDはDigital Micro-mirror Deviceの略であり,約13μm角のマイクロミラーが縦1024列,横768行の2次元で配置され,それぞれが電気制御信号により9800frames/sec以上の速度で+12°から−12°に傾けることができるものである.本実習では,このDMDチップを使用した簡易的な投影プロジェクタ実験装置により,デジタル映像データを変換,ミラー駆動タイミングを制御してスクリーンに映像として投影し,具体的な画像処理の応用として実習する.また,他の画像処理応用例としてDMDチップを使用した非接触3次元表面形状測定顕微鏡により画像を取得し,これを画像処理することでサンプルの表面形状を測定する.さらに同顕微鏡を使用して焦点の異なる画像を取得し,それらの相関係数を導出して正確な焦点位置と焦点深度を検討する.(4名)

キーワード: DMD,画像処理,デジタル画像,相関,MEMS